病院には40名前後の患者が入院していました。大阪・和歌山からのサラリーマンが数名、県内の商店主が数名、他はすべて近在の農家の子弟です。女性は、中年の人2~3人を見かけました。紀州弁というのか、「○○○やして・・」の独特の語尾が飛び交っています。
家からトランプ(以後正式にカードと呼びます)2組と、コントラクトブリッジの解説書2冊を送ってもらいました。私のいる第7病棟は6人部屋です。周りに声を掛けたら、何となく寄って来ました。「ばば抜き」や「神経衰弱」は大抵知っていました。農家の人は殆ど小学校出で、ワン、ツー、スリーまでは知っているが、後はよく判らんと言います。暫く「神経衰弱」や「七並べ」などをしながら、4種類の札の呼び名(特にクラブをクローバーという人が多かった)や、ワンからテンまで、ジャック・クイーン・キング・エースなど、根気よく反復しながら遊びました。
「ツー・テン・ジャック」を、多分半月ぐらい徹底的にやりました。「切り札」のルールと効用を会得してもらうためです。毎日5~6時間やる訳ですから、結構上手くなりました。飽いてきた処で、「マリッジ」(2人だけのゲーム)をやって、「ナポレオン」に進みました。常連は5~6人に減りました。そして遂に「コントラクトブリッジ」に挑戦となりました。4月の入院から3ヶ月経っていました。ここまでと違って、ブリッジは難航しました。札の強弱が後戻りしたり、スリーの上がツーになったりしました。我ながら根気よく続けました。曲りなりにも格好が付いてきた頃、しびれを切らした副院長が召集をかけました。ゾロゾロと院長室(前述の通り院長は経営者で、殆ど顔を出しません。副院長が実質最高責任者で、すべてを取り仕切っていました)に集まりました。
ダラダラして恐縮ですが、あと1回ご辛抱願います。
ー 続く ー