偽装爆弾をつけた練習機は、東に向かって滑走して行った。最初は、滑走試験だけと思っていたが、止まらずそのまま真っ直ぐに滑走を続ける。東には林が見える。突っ込むかと思う頃、やっと離陸、木立すれすれに飛び去った。これでは使い物になるまいと思った。
(中練特攻の小生らは、そんなことは露知らず、模擬弾を付けて訓練していた)
超高度(1万メートル)で西北に向かうB-29の編隊があった。後方に編隊を追う小型機らしきもの1機。そのとき白煙らしきもを噴いた。やられたと思ったとき、最後尾の1機が、白煙を上げ、遅れ出し、やがて鹿島灘の方に消えていった。固体ロケットの補助推進装置と斜め機銃を付けた「紫電改」の活躍だった。
ある時、変わった形の飛行機が1機、旋回しながら下りてくる。側面は魚のように見える。爆音はしない。「秋水」か?液体ロケット邀撃戦闘機『秋水』が開発中との事は聞いていた。滑空機、それもソアラーのように見事な着陸だった。停止線には、濃紺の制服を着た士官が集まって、説明を受けている様子だった。
「神之池航空隊」へ出張を命じられた。そこは「櫻花」特攻の訓練基地で、訓練に使われた「零練戦」に爆弾投下器の取り付けに出向き30機ほど取り付けた。これは使われなかったらしい。
艦載機による空襲は二度遭った。地下工場に移っていたため、地上の建物は穴が開いただけで米軍機も張り合いがなかっただろう。
9月12日、海軍技術学生罷免。帰郷。
概略以上のようですが、今考えると、我々の中練特攻機による特攻訓練は海上スレスレの超低空飛行訓練が多かった。(小樽沖)低空飛行は電探に真近までひっかからないと教わったこともあったようだが、他にも理由(エンジン出力)があったのだな。
同級生が目と鼻の先に居て知らずに、戦後60年になって再会し事実を知り、何か運命的なものを感じた。彼とはクラス会でよく遭う。